旅路のうつわ

旅先で出会った器を綴っています。主にやきものです。

団螭紋碟

中国のやきもので、とくに好きなのは、青磁、白磁、そして染め付けだ。特に明代後期。中国では染め付けのことを「青花」と呼ぶ。

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この小皿は前回に紹介した杯と模様が似ている。でも、買ったのはもっと何年も後で、場所も違う。これを見つけたのはたしかベトナムのアンティークショップだ。ホイアンの旧市街だったか?華僑が多いベトナムには、中国の骨董品が多い。もちろんニセモノも多いが、明代後期の染め付けの掘り出し物がたまにある。

 

これを見つけた時、龍に似た感じの文様に、「あの杯と同じだ」と心が踊ってしまった。輪郭を描いてさーっと手早く塗った感じながら、顔の部分や背中のラインの色分けなど細部のバランスがよく、きっと手慣れたやきもの職人が描いたのかな、など想像するのがとても面白い。そんなことを考えるひとときが好きだ。

 

中国で染め付けを買うと、およそいつの時代のものかを調べるため、必ずある本でチェックする。中国で買ってきたオール中国語の本だ。そして、似ている絵を見つけた。 

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 「万暦 団螭紋碟」とある。

団螭紋碟の意味がいまいちよくわからなかったので、中国語字典で調べた。

 

団=丸い

螭=角のない龍に似た想像上の動物

紋=文様

碟=浅い皿

そして万暦は明代の万暦帝(1573年 - 1620)の時代という意味だ。

漢字文化の伝統がある日本人でよかった。

私の小皿が万暦帝時代のものかどうかは、はっきりとは分からない。本の写真が白黒で、印刷がやや雑な点もある。ただ、「団螭紋碟」であることは確かだ。それだけでも満足。今、この皿はあの小さな杯の隣に置いてある。

前回の杯もこの小皿も、どの本で調べたかというとこの本だ。

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「明代 民窯 青花瓷大観」。

たしか上海か杭州の書店で買った本。団結出版社という名前がいかにも中国だ。もう何年も前に買った本だけれど、頼りになる1冊なのである。

 

旅路の器 明代の青花杯・北京

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旅の仕事で出かける時、気になる器に出会うと、つい買い求めてしまう。特にやきもの。

中国の陶磁器がとても好きなのだが、そのきっかけになったやきものがこれ。取材の仕事で中国陶磁紀行をした時に見つけた小さな杯。明代後期の青花。青花とは染め付けを表す中国語だ。

 

中国陶磁器の産地を訪ねて、あちこち取材に行った時期がある。たぶんもう15年以上前になる。下調べで中国陶磁の本をたくさん読んだ。また、上海や杭州などの書店で陶磁の本を見つけては、中国語を読めないのに買って来た。さいわい漢字がわかるから、陶磁器の専門用語を覚えるのにとても役立った。北京の国立博物館(故宮じゃないほう)、景徳鎮の博物館、杭州の博物館、また、河北省、銀川など、地方に行った時にはなるべく陶磁器の博物館を訪れて本物の古陶磁を見まくった。定窯、磁州窯、景徳鎮、汝窯越州窯、龍泉窯、南宋官窯、唐三彩、などなど。

 

そのせいか、北京の有名な骨董市場、藩家園に行った時、比較的新しい清代のもの以外、おびただしい数のニセモノが売られていることがよくわかった。でも、1つ1つよく見ると、たまに本物が混ざっている。この杯は藩家園で見つけたもの。明代の歴代民窯青花の本を持っていたので、杯の形、質感、図案、筆遣いなどを見て、きっと明代後期のものかなと思い、買ってみた。ふちが少し欠けているので売り主と交渉してけっこう安くしてもらった記憶がある。

 

家に帰って本を見たら、万歴帝の時代のものに似ているものがあったので嬉しかった。中国明代のやきものは、皇帝が変わるとともに官窯も民窯も、やきものの作風が変わるところが面白い。特に明代後期の民窯は、やきもの職人が筆でささっと描いたような、のびやかな風合いが気に入っている。本を見ていくと、絵柄も時代ごとの特徴や傾向があることに気がつく。

 

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 私が買ったものも本物と100%は断言できないけれど、質感、図案、風合いが気に行っているので良しとしている。もう何年も北京に行っていないけれど、藩家園は今も健在なのだろうか。

旅先で出会ったたくさんの器をiphoneで撮って、ぽつんぽつんと記録していくことにする。